山田山庵 赤茶碗
恭しく出された碗。
ふわりと白い
絹の布団に包まれている。
箱には昭和四三年九月と年記がある。
淡い紅。
これまで見た中では、
やや背が高く大ぶりな印象だ。
故に見込みは深い。
銘 芙蓉峯
つまり富士山をいう。
また芙蓉は、
蓮の美称でもある。
名のとおり花を思わせ、
かつ山のようでもある
山庵は生涯一度だけ
名古屋にて個展を行なっている。
茶碗造りに目覚めたのは、この地であった。
帝都以外では唯一であり、
この地で作品を披露するというのは
己にとって特別であったと想像する。
後日談であるが
茶碗の前所有者は
以前より懇意にして頂いている方
この個展を企画した人物でもあった。
この茶碗は、その個展で割愛を乞うたという。
一箇所ある直しは元よりあり
嫁入りが決まってからが大変であったという。
箱や紐などの"設え"から始まり、
プロのカメラマンに依頼して
あらゆる角度から撮影がなされたという。
1つ1つの作品に対する愛着、
むしろ執念を物語るエピソードともいえよう
1つの碗に込められた思いは
知る由もなく、果てしない。
by otenkidaifuku
| 2012-09-12 18:52
| 茶
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