
ある日、
物音に振り返ると
庭から拝借した花がいた。
静まりかえった部屋に
落ちた花弁。
柔らかくなった西日に照らされて
人は死を恐れ、忌み嫌う。
まして其れを連想させるものを避ける。
かつて
花の枯れ姿までを描いた男がいた。
筧 忠治。
気象台に勤め
自然を観つめ続けた男。
高齢まで生きたが
最後まで一貫した姿
愚直な画家であったという。
彼が挫折の中
取組んだのは静物画であった。
刻々と変化する姿
時の流れを追いかけた筆跡。
枯れて
腐って
朽ちて
消えようと
西洋のvanitasでなく
東洋の生きる命
天寿を全うし
駆け抜けた一瞬
最後の
最期まで。
筧 忠治 1908~2004
数回公募展に出展するのみで殆ど世に発表する事なくアマチュアを貫いた。
作品は頑として売る事はなかったという。存命中、歌舞伎役者 坂東玉三郎氏は自画像に感銘を受け、押し問答の末、手に入れたという逸話が残る。
愛知県美術館、刈谷市美術館、一宮市博物館収蔵
(私見ではあるが)17世紀オランダで華やいだ静物画の頂点を目指し、極東の或る男によって愚直に体現された絵は現代日本の隅に生きる私に驚きと共感を与える。
(Jan Brueghel the Elder、Ambrosius BosschaertやWillem van Aelstなど)
器:琉球 荒焼徳利